深淵の騎士を小説風に表現してみた
閑散とした崩れかけた城で嘲笑うかのような黒馬の嘶鳴きがあった。それは鳴り止むこともなく一定。その嘶鳴きは心に焦燥を帯びさせ、意思が弱ければ心が粉々に砕かれるであろうって
声の主は正しく馬であり、その姿は筋肉質でがっしりとしていた。
一言で言うならば軍馬。
しかし、馬というには些か一定の感情が豊かか。
その嘶鳴きには嗤いが含まれており、馬の表情も嘲笑っている。
また、馬が嗤うところの他に異質なところとして、色が真黒なのだ。否、それは色というよりは色がない、闇と言えばよいか。
太陽も月の光も射さない完全な夜闇。
その軍馬に跨がるは暗黒の色をした虚ろに佇む騎士とその従者。
元の騎士は清廉潔白なる誇り高貴き騎士であった。
しかし。
ある力により堕落させられ軋んでいた心が、馬の嘶鳴きで粉砕され、痛みと共に軋みあげていたその心は黒く塗り潰されいつしか、空虚な騎士となった。
今日もまたその痛みを引きずりながら、辛うじて残った黒に染まった本能のごとき義務を果たそうと侵入者を殺戮していく。